訪問介護の現場で仕事をしていると、
「ヘルパーさんなんだから、これくらいやってくれてもいいでしょう?」
と言われる場面に出会うことがあります。
実際に訪問しているお宅では、利用者さんご本人ではなく、
同居している息子さんの洗濯まで一緒にしてほしいと求められることがありました。
その都度、介護保険サービスではできないことを丁寧に説明し、お断りしています。
けれど、何度も同じお願いを断るうちに、
ヘルパーとの関係がぎくしゃくしてしまうこともあります。
「冷たい」「融通がきかない」
そんなふうに受け取られてしまうのです。
しかし、それはヘルパー個人の気持ちや判断ではありません。
決められた制度の中で、利用者さん本人の生活を支えるためのルールです。
今、訪問介護は深刻な人手不足の時代に入っています。
このまま家族と支援者の認識のズレが埋まらなければ、
本当は必要なのに、支援を受けられなくなる――
そんなケースが増えていくかもしれません。
ヘルパーは「お手伝いさん」ではありません
訪問介護のヘルパーは、家事代行や家政婦ではありません。
介護保険サービスは、利用者さん本人の自立した生活を支えることが目的です。
そのため、
- 利用者さん以外の家族の洗濯
- 同居家族の食事作り
- 家族全員分の掃除や片付け
といった支援は、原則として行うことができません。
「ついでにやってくれても…」
そう思われる気持ちも理解できますが、
その「ついで」が積み重なることで、現場は成り立たなくなってしまいます。
「できません」と言うのには理由があります
ヘルパーがお願いを断るとき、
それは決して意地悪をしているわけでも、楽をしたいわけでもありません。
- 介護保険のルールで決められている
- 事業所として認められていない
- 万が一のトラブルや責任問題を防ぐため
こうした理由があります。
ヘルパー個人の判断ではなく、
制度と契約の中で動いているということを、ぜひ知っておいてほしいのです。
事業者を変えれば解決する問題ではない
「じゃあ、他の事業所に変えます」
そう言われることも、実際にあります。
ですが、どの訪問介護事業所も、
同じ介護保険制度のルールの中でサービスを提供しています。
さらに今は、深刻な人手不足です。
事業所を変えたくても、
- 新規では受けてもらえない
- 希望する曜日や時間に来てもらえない
- そもそも空きがない
という状況も珍しくありません。
訪問介護は、
「選べばいつでも来てもらえるサービス」ではなくなりつつあります。
人手不足の時代、支援を受け続けられる人とは
現場で感じるのは、
支援が長く続くご家庭には共通点があるということです。
- できないことを理解しようとしてくれる
- 感謝の言葉がある
- ヘルパーを一人の人として尊重してくれる
特別なことではありません。
ほんの少しの配慮と理解です。
反対に、
無理な要求が続いたり、強い言い方をされると、
どうしても支援を続けることが難しくなってしまいます。
そして一番困るのは、
ヘルパーでも事業所でもなく、利用者さん本人なのです。
家族にできる、たった一つの大切なこと
訪問介護は、
「全部任せる」サービスではありません。
家族、ケアマネジャー、ヘルパーが
一緒に支えていく仕組みです。
困ったとき、不満があるときは、
ヘルパーに直接ぶつけるのではなく、
まずはケアマネジャーに相談してください。
制度の中で、できる方法を一緒に考えることができます。
訪問介護は、当たり前に続くものではありません
訪問介護は、
人が人を支えることで成り立っているサービスです。
理解と協力があってこそ、
利用者さんの安心した在宅生活が続きます。
これからの時代、
「してもらって当たり前」ではなく、
「支え合う関係」を築けるかどうかが、
介護を続ける大きな鍵になるのではないでしょうか。

