高齢者の「やる気が出ない」は精神的廃用性症候群かも?〜訪問介護の現場からできる対応〜

介護

私が定期的に訪問しているMさんは、80代の一人暮らしの方です。
ある日、こうおっしゃいました。

「最近、何を食べてもおいしくないんです」
「やる気が出ない。何をしても面倒に思えて…」

膝が悪く、杖をついて歩いておられます。掃除や調理の支援で訪問しています。

精神的廃用性症候群とは?

精神的廃用性症候群とは、高齢者が長期間にわたり精神的・社会的刺激を
受けないことで、意欲の低下や無気力、感情の鈍化などの状態になることです。

身体の「廃用(使わないことで筋力や機能が低下する)」と同様に、
心も“使わない”ことで元気を失ってしまうのです。

原因としては、以下のようなことが考えられます:

  • 生活リズムの単調化(外出や交流が減る)

  • 大切な人との死別や環境の変化

  • 「自分にはもう役割がない」と感じる虚無感

介護者としてできること:話を聴き、否定しない

Mさんに対して私が心がけているのは、「話を聴くこと」です。
無理に明るくさせたり、励ましたりするのではなく、ただ寄り添うこと。

  • 「そう感じているんですね」

  • 「それはつらかったですね」

そんな言葉を添えることで、Mさんの表情が少しやわらぐ瞬間があります。

精神的廃用に対しては、心を動かす“安心”の土台作りが何よりも重要です。

日課が生きがいに:Mさんの“お墓参り”

そんなMさんにとって、日課にしている事があります。
それは「近くのお墓へ行くこと」です。

「今日もお墓、行ってきました」
「風が気持ちよかったですよ」

お墓参りはMさんにとっての小さな“役割”であり”行動の目的”です。
目的のある行動は、精神的な活力につながります。

介護者は、そのような日課や生きがいに光を当て、
「その人らしさ」を支えることが求められます。

まとめ

精神的廃用性症候群は、目に見えにくい分、気づかれにくい問題です。
しかし、“何もしたくない”という状態には、必ず理由があります。

介護者としてできるのは、心の扉をこじ開けることではなく、
その扉の前で静かに寄り添うこと
Mさんのように、何気ない日課や対話の中から、
少しずつ心が動く瞬間を積み重ねていくことが、
何よりの支援になるのだと感じています。

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