訪問介護の仕事をしていると、高齢者の方のご自宅でよくこんな言葉を耳にします。
「何から片付けていいのかわからないのよ…」
「体が動かなくてね、ついそのままになってしまって」
気がつけば、部屋の隅には使わない家具、押し入れの中にはいつかの服や書類、
足の踏み場もないほどの荷物。
でも、それらはすぐにどうにかできるものではありません。
「これ、まだ使えるから…」
「いつか誰かが使うかもしれないし…」
訪問先の高齢者のお宅で、何度この言葉を聞いたことでしょう。
どれも大切にしまい込まれたものばかり。
けれど、その“もったいない”という優しさが、いつの間にか家の中を埋め尽くし、
身動きの取れない暮らしになってしまっているのです。
私はその姿を目の当たりにして、
「50代の今こそ、自分の暮らしを見直す時期なのでは」と強く感じるようになりました。
老後の安心のために、元気なうちから始めることが大事なのかもしれません。
50代は、暮らしを整える“ゴールデンタイム”
50代という年代は、体力にもまだ余裕があり、人生の折り返し地点でもあります。
子育てがひと段落し、親の介護が始まる方もいる時期。
だからこそ、「自分のこれからの暮らし方」を考えるのにちょうどいいタイミングでもあります。
モノを手放すことは、自分の価値観を見直すこと。
「これは本当に必要?」「これからの自分に合っている?」
と問いかけながら、ゆっくり向き合っていく。
そんな断捨離は、無理に捨てるのではなく、未来の自分へのやさしさでもあるのです。
どこから始める?気持ちも体もラクな場所から
断捨離といっても、いきなり家中を片付ける必要はありません。
おすすめは「今使っていないモノ」から。
例えば:
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何年も着ていない洋服
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賞味期限が切れた食品
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取っておいたけど使っていない紙袋や空き箱
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古い書類や取扱説明書
これらは、手放しやすく、すっきり感をすぐに味わえるアイテムたちです。
1日5分、引き出し1つからで十分。小さな成功体験を積み重ねていくことで、
「やってよかった」という気持ちが自然と生まれてきます。
“もったいない”の先にある、新しい安心
「捨てる=もったいない」と思いがちですが、
「誰かの手に渡って、使ってもらえる」ことも立派な活かし方です。
フリマアプリ、リサイクルショップ、地域の譲渡会など、いまは手放す先も多様になっています。
また、必要以上にモノを抱え込まないことで、将来、子どもや家族の負担を
減らすことにもつながります。
片付けに困っている高齢者のご家族から、
「もっと早くに始めてくれていたら…」という声を聞くことも少なくありません。
最後に:50代から始める“軽やかな暮らし”
断捨離は、モノを減らすだけの作業ではありません。
「これからの自分に本当に必要なものは何か?」を考える時間です。
もったいないという気持ちを否定せず、そのやさしさを「未来の安心」につなげていく。
50代の今だからこそできる、心と暮らしの整理を、私たち自身のペースで始めてみませんか。
まとめ
今日手放したひとつが、明日の笑顔に変わるかもしれません。
まずは一歩、引き出し一つから始めてみましょう。