Oさんは几帳面な性格で、お手伝いを頼むと喜んで洗濯物をたたんでくれます。
それもきっちり角を合わせて、私がたたむより断然きれいです。
ショートステイで施設にいますが、数年前は、妹さんのお宅に月に2回ほど
お泊まりで出かけていました。
それもコロナでなくなって、それからでしょうか。収集癖がひどくなりました。
認知症の収集癖
紙類を代表とした収集癖は、認知症に見られる症状の一つです。
最初は、ティッシュペーパーをズボンのポケットに1.2枚いれていましたが、
トイレに行ってトイレットペーパーや手を拭くペーパーを何枚か持って帰って、
部屋のベッドやテレビ台の引き出しに詰めるようになりました。
それがだんだん増えていき、段ボール1箱いっぱいに・・・
本人に何故集めているのか聞くと、「後でつかうのよ。」とか「手を拭くのにいるのよ」
とおっしゃいます。
職員の対応
Oさんに対して、いろいろな工夫をしてみました。まずはみんなのものだから、
トイレの目のつく所に貼り紙をしました。
次に、手を拭くためにハンカチや、ポケットティッシュをポケットに入れて、
いつでも使えるようにしました。
集めるところを一か所に集め、十分にあることを見せて、それ以外の所から
わからないように少しずつ処分していくようにしました。
その後のOさん
いろんな対策を講じてみましたが、なかなか収まらず、ついにトイレから持ち帰った
トイレットペーパーをデイの皆がいる机の上で広げたり、たたんでみたりし始めました。
周りの利用者さんから、「駄目よ!」と注意されると興奮して怒りだす始末です。
職員が間に入って、なだめたりしても余計に意地になってしまいます。
注意をそらして、散歩に誘ってみたり、お手伝いをお願いしてみたりしていました。
なぜ収集するのか?
いくつかの理由や背景があります:
🔹 不安や安心感の確保のため
ものが手元にあることで安心できる…という感覚が強くなる場合があります。
たとえばトイレットペーパーは「いつも必要なもの」「無くなったら困るもの」として、
過剰に確保したくなることがあります。
🔹 記憶障害による繰り返し行動
物を置いたことを忘れてしまい、「まだない」と思って何度も取ってしまうことがあります。
集めている意識がなくても、結果的にたまっていくことも。
🔹 昔の経験や癖が表れている
戦争や災害の経験、物資が少なかった時代の記憶から、「あるうちに確保しておく」
という考えが残っている場合もあります。
🔹 自分の存在価値を感じるため
「これを集めておくことが自分の役割」「ちゃんと備えている自分はしっかりしている」
という気持ちにつながっていることもあります。
Oさんは自宅にいた頃は、きれいに片付けして、庭の手入れが好きだったそうです。
トイレットペーパーに限らず…
・ビニール袋
・新聞やチラシ
・お菓子の包み紙
・薬の包装
などを丁寧にため込んでいる方もいます。
Oさんに対する解決法は?
施設に入って、熱中してやることもなく、不安や孤独が大きくなったのでしょう。
他の利用者さんともっとコミュニケーションをとるよう、孤独を解消したり、
家族さんにも協力してもらって、気分転換に外出するようにしました。
――何かを「やめさせる」ことより、
「別の楽しみを見つけてもらう」ことの方が、きっと大切なのかもしれません