◆ヘルパーの調理にはこんな制約がある
- 時間は30〜60分ほど
- 調理器具・調味料は家庭にあるものだけ
- 衛生・火の管理・再加熱も考慮
- 嗜好・食事制限・嚥下状態への配慮
訪問介護の調理は“限られた時間と環境”の中で行われる
限られた時間でも“その人の食べ慣れた味”を届けることが調理援助の魅力。
そうした制約がある中でも、「また作ってほしい」「やっぱり家のご飯が一番」
と言っていただける料理には共通点があります。
今回は、私が調理援助の中で実際にリクエストされることが多く、
高齢者からの人気が高いおかず5選を紹介します。
◆高齢者に人気のおかず5選
① 肉じゃが
高齢者から「また作って」と言われる定番中の定番が肉じゃがです。
昔から家庭で親しまれてきた料理という安心感があり、
食欲が落ちている方でも箸が進みやすいメニューです。
✅人気の理由
・甘めの味付けで食べやすい
・じゃがいも・にんじん・玉ねぎなど馴染みのある具材
・煮汁ごと食べられて喉通りがよい
・冷めてもおいしく、翌日に温め直して食べられる
✅ヘルパー目線での工夫ポイント
・時間が限られているため、具材はあらかじめ小さめにカット
・落し蓋や電子レンジを活用して時短
・味付けは「砂糖・醤油・みりん」の基本でまとめやすい懐かしい家庭の味。
② カレーライス
訪問調理の中で意外と人気が高いのがカレーライスです。
「昔は家族に作っていた」「おかわりしたくなる」と懐かしさから
リクエストされる方も多くいます。
✅高齢者に喜ばれるポイント
・辛さ控えめ(甘口〜中辛)で刺激が少ない
・市販のレトルトにはない“ゴロゴロ野菜”が好まれる
・にんじん・じゃがいも・玉ねぎなど定番具材で安心感がある
・量を調整しやすく、翌日に温めてもう一度食べられる
✅ヘルパー目線での工夫
・煮込み時間を短縮するため、野菜は小さめに切るか電子レンジで下ごしらえ
・辛みの強いスパイスは加えず、ルウだけで味付け
・「ごはんにかけておく」「別皿に盛る」など本人の食べ方に合わせる
特に「昔ながらの家庭のカレー」が好きな方は多く、具材が見える安心感や
香りが食欲につながります。
③ 煮魚
焼き魚よりも柔らかくて食べやすい」「骨を気にせず食べられる」といった理由から、
煮魚は高齢者にとても人気があります。
サバの味噌煮、カレイの煮付けなど、家庭的で昔ながらのおかずとして定番です。
✅高齢者に好まれる理由
・歯や入れ歯の状態に関係なく食べやすい
・甘辛い味付けがご飯によく合う
・魚の栄養(たんぱく質・DHA・EPA)がしっかり摂れる
・冷めてもおいしく、作り置きにも向く
✅ヘルパー目線での工夫
・骨が少ない切り身を選ぶ(サバ・カレイ・たらなど)
・調味料は「酒・みりん・砂糖・醤油」でシンプルに
・落し蓋を使って短時間で味を染み込ませる
・鍋が1つしかない場合も多いので、水分量は最小限に調整
「昔は魚ばっかり食べよった」「味噌煮が一番ご飯が進むのよ」と話される方も多く、
懐かしい味として喜ばれやすい一品です。骨が少なく食べやすい。
甘辛い味付けがご飯によく合う定番メニュー。
④ なすの煮びたし
さっぱりして食べやすく、季節を問わず人気なのが「なすの煮びたし」です。
油を吸いやすい野菜ですが、煮びたしにすることで高齢者でも負担なく
食べられる柔らかさになります。
✅高齢者に好まれる理由
・口当たりがやわらかく、噛む力が弱くても安心
・出汁のうまみで薄味でも満足感がある
・冷めてもおいしく、常備菜としても好まれる
✅ヘルパー目線での工夫
・時間短縮のために先に電子レンジで加熱しておく
・麺つゆや白だしを使って味付けを簡略化
・油を使わず、煮るだけで仕上げる場合も多い
・皮が硬い場合はピーラーで一部むいておく
「なすは子どもの頃から好き」「昔は畑で作っていた」と思い出話につながることもあり、
世代になじみ深いおかずの一つです。柔らかく喉通りがよい。
冷めても美味しく季節問わず人気。
⑤ ポテトサラダ
主食にも副菜にもなる万能おかずとして、ポテトサラダは高齢者から根強い人気があります。
昔ながらの「じゃがいも・にんじん・きゅうり・ハム」などの定番具材が安心感につながります。
✅高齢者に喜ばれる理由
・柔らかくて食べやすい
・酸味が控えめで口当たりがまろやか
・ご飯にもパンにも合う
・「昔よく作ってた」「懐かしい味」と感じてもらえる
✅ヘルパー目線での工夫ポイント
・茹で時間を短縮するため、電子レンジ加熱
・きゅうりや玉ねぎは塩もみして水分を減らす
・マヨネーズだけでなく少量の酢や砂糖で調整
・嚥下が気になる場合は粗つぶし〜なめらかめに仕上げる
量が多く作れない場合でも、小鉢1品として喜ばれやすく、
「次もこれにして」と言われることもよくあります。
◆まとめ
訪問介護での調理は、家庭料理を提供するだけではありません。
限られた時間、道具、調味料、そして利用者さんの体調や嗜好に合わせながら、
その人の“食べ慣れた味”を再現することが求められます。
今回紹介した
・肉じゃが
・カレーライス
・煮魚
・なすの煮びたし
・ポテトサラダ
は、どれも高齢者に馴染みがあり、安心して食べられる人気メニューです。
「若い人にはありふれたおかず」でも、高齢者にとっては懐かしさ・生活のリズム・
楽しみにつながる大切な一品になることがあります。
短時間でも温かい料理を作ってもらえることで、食欲や生活意欲が戻る方も少なくありません。
調理援助は“栄養補給”だけではなく、心の安心や会話、思い出にもつながる支援です。
これからもその人らしい食卓づくりを大切にしていきたいと感じています。