私が訪問している利用者さんは、独居で認知症があります。
お部屋は決して片付いているとは言えません。
机の上には書類が山積み、収納スペースはあるものの中は整理されておらず、
その収納扉の前には籠が置かれ、そこにも物が入っています。
初めて訪問したときは、
「収納があるのに、なぜ使わないのだろう」
「少し片付けた方が生活しやすいのでは」
そう感じました。
でも、関わり続ける中で気づいたことがあります。
見えない場所は「存在しない」のと同じ
認知症のある方にとって、
見えない=忘れてしまう
ということはよくあります。
収納の中に入れてしまうと
- 何を入れたか分からなくなる
- 必要な時に探せなくなる
- 「誰かに取られた」と不安になる
その結果、
目につく場所に物を置く
という行動につながっているのだと感じました。
収納が「使えない」のではなく、
使うことで不安が増えてしまうのです。
籠は“散らかり”ではなく安心の場所
収納扉の前に置かれた籠。
一見すると邪魔に見えますが、
利用者さんにとっては
「よく使う物」「大切な物」をまとめた場所です。
本人が分かる位置、分かる形で置かれていることが、
その人の生活の安定につながっています。
ヘルパーが「片付けない」という支援
ヘルパーとして大切にしているのは、
無理に片付けないことです。
・勝手に収納に入れない
・「ここにしまいましょう」と押し付けない
・本人の置き方を尊重する
その代わりに行っているのは、
- 書類は種類ごとにまとめるだけ
- 籠の中身が分かるように整える
- 転倒の危険がないかだけ確認する
「きれいにする」よりも
「分かる状態を保つ」ことを優先しています。
生活を整えるより、生活を守る
独居で認知症のある方にとって、
環境が急に変わることは大きなストレスになります。
片付いた部屋よりも、
自分が分かる部屋
安心できる配置
それが何より大切なのだと思います。
ヘルパーの役割は、
暮らしを理想の形に変えることではなく、
その人の暮らしを続けられるように支えること。

