訪問している利用者さんに、食道がんの末期の方がいます。
食道が狭くなっているため、おかゆの粒さえ引っかかってしまいます。
そのため、食事はミキサーにかけて、できるだけ滑らかな状態にしてお出ししています。
何でも食べたい気持ちはあるようですが、やっぱり食べられる量には限りがあります。
食べても吐いてしまうこともあります。
栄養不足も心配なので、エンシュアも処方されています。
それでも、その方は「食べたい」という気持ちを失っていません。
「味の濃いものが食べたい」
そうおっしゃいます。
先日、チョコレートをお出しする機会がありました。
その方は、チョコレートを口の中でゆっくり溶かしながら食べていました。
そして、
「おいしい」
そう言って、2粒食べられました。
たった2粒。
でも、私には、その2粒がとても大きなものに感じられました。
病気になる前なら、チョコレートを2粒食べることなんて、特別なことではなかったかもしれません。
でも今は、食べたいと思っても、思うように食べられない。
それでも「おいしい」と感じることができる。
「食べたい」という気持ちを持ち続けている。
その姿を見ていると、食べることは、単に栄養を摂るためだけのものではないんだなと思います。
もちろん、栄養を摂ることは大切です。
でも、それと同じくらい、
「おいしい」
「これが食べたい」
と思えることも、その人らしく生きるための大切な楽しみなのかもしれません。
訪問介護の仕事をしていると、利用者さんからいろいろなことを教えてもらいます。
今回のことで私が感じたのは、
食べられる量ではなく、食べたいと思う気持ちが、その人の生きる力になることもある。
ということでした。
「おいしい」と言ってもらえた2粒のチョコレート。
その笑顔を見たとき、私もなんだかうれしくなりました。
これからも、その方が「食べたい」と思う気持ちを大切にしながら、できることを一緒に探していけたらと思っています。
食べることをあきらめない。
それはもしかしたら、生きることをあきらめないことにもつながっているのかもしれません。
