訪問介護で関わっている利用者さんのお宅には、新聞やチラシ、請求書、生協の注文書など、
たくさんの紙類が積み重なっています。
「まだ確認していないから、とりあえず置いておく」
そんなふうに、なかなか捨てられないのです。
一緒に確認して、本人が納得すれば捨てることはできます。
でも、いざ捨てるとなっても、簡単には終わりません。
ホッチキスの芯を丁寧に取り除き、名前が書かれている部分はハサミで切り取る。
一枚一枚、時間をかけて作業されます。
食品についても同じです。
「まだまだ食べられる」
そう言って、なかなか捨てさせてくれません。
この利用者さんは、10人兄弟の末っ子だったと聞きました。
どのような暮らしをされてきたのか、すべてを知っているわけではありません。
でも、物を大切にする気持ちは、長い人生の中で培われてきたものなのかもしれないと思いました。
私たちから見ると、不要に思える物でも、ご本人には捨てられない理由がある。
認知症だから、何も分からなくなってしまったわけではありません。
今まで大切にしてきた習慣や価値観が、そこに残っていることもあるのです。
介護をしていると、つい目の前の困りごとに目が向きます。
けれど、行動だけを見るのではなく、その人がどんな人生を歩んできたのかを想像してみることも大切なのだと思います。
認知症の方の行動には、私たちには分からない理由があるのかもしれません。
だからこそ、すぐに否定するのではなく、まずはその人の気持ちを知ろうとすること。
そんな関わりを大切にしていきたいと思います。
家族からすれば、どうしてできないの?と思うこともある
認知症の方の行動には、その人なりの理由があるのかもしれません。
そう頭では分かっていても、毎日一緒に暮らす家族にとっては、
簡単には受け入れられないこともあると思います。
家の中には紙類が積み重なり、片付けようとしても、なかなか思うように進まない。
食品も、まだ食べられると言って捨てさせてもらえない。
「どうして、こんな簡単な整理もできないの?」
そう思ってしまうこともあるでしょう。
以前なら当たり前にできていたことが、少しずつ難しくなっていく。
その変化を一番近くで見ている家族だからこそ、もどかしさや悲しさ、
時には怒りを感じることもあるのだと思います。
家族だからこそ、分かってほしい。
家族だからこそ、以前のようにできるはずだと思ってしまう。
でも、認知症によって、物事を判断したり、必要なものと不要なものを区別したり
することが難しくなっている場合があります。
本人も、わざと家族を困らせているわけではないのかもしれません。
介護する側も、いつも優しく受け止められるわけではありません。
だからこそ、家族だけで抱え込まず、介護サービスなど周囲の力を借りながら、
少しでも気持ちに余裕を持てる環境をつくることも大切なのだと思います。
認知症の方の気持ちを理解することと、介護する家族が我慢し続けることは、
同じではありません。
お互いにとって無理のない関わり方を見つけていけたらと思います。
