認知症のOさん宅に訪問介護でお伺いしていますが、
頭を悩ませています。
それは「同じ物が何個もある」ということ。
シャンプーやトイレットペーパー、洗濯洗剤など、日用品が
あちこちに積まれている状態です。
日用品だけに限らず、野菜も安かったのよと二つ入りのキャベツや、
5本入りのキュウリなど冷蔵庫に入りきらず、山盛りにされています。
ご本人も「買いすぎたかもね」と言われるのですが、
物はどんどん増えていくばかり。
今回は、こうした買い物のトラブルに対して、ヘルパーとして
どんな対応ができるかを考えてみます。
認知症による買いすぎの背景とは?
認知症が進むと、以下のような理由で「同じ物を何度も買ってしまう」ことがあります。
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置いた場所を忘れてしまう(記憶障害)
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「足りないかもしれない」と不安になる
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買い物が日課になっており、やめられない
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物があることで安心感がある
これらは、認知機能の低下によって生まれる自然な行動であり、
頭ごなしに否定しても改善は難しいのが現実です。
ヘルパーができる対応方法
否定せず、寄り添って整理する
「こんなにいらないですよ」「また買ったんですか?」という言葉はNG。
本人を責めずに、「これ、たくさんあるからまとめて使いやすくしましょうね」
と、一緒に整える姿勢が大切です。
定位置管理と“見える化”
同じものを買ってしまう原因の一つに「見えない・分からない」があります。
よく使う物は一か所にまとめて、「ここにありますよ」
とラベルを貼るなどの
見える収納を工夫しましょう。
捨てずに“保管”を提案する
物を勝手に処分すると混乱や不信感を招くことがあります。
「大切な物ですので、こちらに保管しておきましょうね」
と別の場所に移すことで、本人の気持ちを尊重しながら
空間を整えることができます。
チーム連携で行動を把握する
ケアマネジャーや家族と連携し、買い物の頻度や内容を共有します。
必要に応じて、買い物代行サービスや金銭管理の相談も視野に入れましょう。
掃除=整える時間ととらえる
掃除の目的は単にキレイにすることではありません。
「Oさんが使いやすくなるように並べましょう」といった声かけで、
その人の生活に寄り添った整え方を大切にします。
買い物行動には“その人らしさ”がある
買い物は、ただの生活動作ではなく、「自分で選ぶ」「日々を過ごす」
ための大切な自己表現のひとつです。
物が多くて困っているように見えても、そこには安心や
喜びも含まれていることを
忘れてはいけません。
ヘルパーとしては、毎回完璧に片づけることが目的ではなく、
「今日も一緒に気持ちよく過ごせた」と感じてもらえる
時間をつくることが大切です。
まとめ
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認知症の利用者さんが同じものを買ってしまうのは、記憶や不安に由来する行動。
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否定せず、「見える化」「保管」などの工夫で安心をサポートする。
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ケアマネや家族と連携しながら、買い物行動を無理なく見守る。
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掃除は、ただ片づけるのではなく、“気持ちを整える時間”と考える。
物があふれていても、その一つひとつには「その人の暮らしの物語」が詰まっています。
ヘルパーは、ただ片づける人ではなく、その物語に寄り添うサポーターでもあるのです。