私が訪問している認知症のKさん
先日訪問すると、一生懸命引き出しを開けて何かを探されていました。
何を探しているのか聞いてみると、郵便局のキャッシュカードとのこと。
一緒に探してみますが、見当たりません。Kさんは息子さんと同居していますが、
息子さんにキャッシュカードの暗証番号を教えていないため、ご自分で銀行で
お金をおろしていました。
ケアマネージャーさんが、息子さんにも教えておいた方が、もしものためにいいよと
勧めても頑として、教えていません。
そのうちに認知症の症状が進むと、キャッシュカードの番号も、どこに置いているかも
わからなくなってしまうかもしれません。
そうなって困るのは、子供さんです。
そういったリスクに備えて、財産管理を家族に託す「家族信託」が
注目されています。
今後もさらに増えるものと思われます。
家族信託とは
自分の財産を家族に託すことです。管理、運用、処分などを任せることができます。
メリット → 認知症による財産の凍結を避けられます。
デメリット→ 親族間のトラブルが起きる可能性もある。
増えると考えられる理由
- 認知症患者の増加
現在、日本では5人に1人が認知症になると予測されています。
認知症になると本人の判断能力が低下し、財産管理ができなくなるため、
家族信託を活用する人が増えると考えられます。 - 成年後見制度のデメリット
成年後見制度も財産管理の方法の一つですが、- 自由度が低い(資産運用がほぼできない)
- 費用がかかる(後見人報酬が発生)
- 一度始めると原則として途中でやめられない
などのデメリットがあるため、代替手段として家族信託が注目されています。
- 相続対策としての利用が増加
家族信託は認知症対策だけでなく、スムーズな相続のための対策としても活用できます。 例えば、- 高齢の親が元気なうちに、財産を子ども(受託者)に託し、本人が認知症になった後もスムーズに管理できる
- 遺言では対応しきれない複雑な資産の管理・承継を家族信託で整理できる
- 法改正や認知度の向上
家族信託は比較的新しい制度ですが、司法書士や弁護士が積極的に情報発信するようになり、認知度が高まっています。さらに、行政も成年後見制度の見直しを進めており、将来的には家族信託の利用を促す流れが強まる可能性があります。
どんな人が家族信託を検討するとよい?
✔ 親が高齢で認知症リスクがあるが、不動産や預貯金を適切に管理したい人
✔ 会社経営者や資産家で、事業承継や相続対策を考えている人
✔ 成年後見制度を使うより、柔軟に財産管理をしたい人
家族信託のためのやるべきことリスト
家族信託の利用者はすでに増えてきており、今後さらに一般的な制度になると考えられます。
目的を明確にする
家族信託は「相続対策」「認知症対策」「資産管理の円滑化」など様々な目的で利用されます。まずは、何のために家族信託をするのかを明確にしましょう。
信託する財産を整理する
- どの資産を信託の対象にするか(不動産、預貯金、株式など)
- 信託財産の価値を把握する
- 必要に応じて資産の評価や登記情報を確認する
関係者(受託者・受益者)を決める
- 委託者(財産を託す人) → 通常は親や財産の持ち主
- 受託者(財産を管理・運用する人) → 家族や信頼できる人
- 受益者(利益を受ける人) → 多くの場合は委託者本人、将来的には家族
誰を受託者にするかは特に重要で、信頼できる人を選ぶことが必要です。
信託の内容を決める
- 受託者はどのように財産を管理・運用するか
- どのような場合に財産を処分できるか
- 受益者が亡くなった後の財産の帰属先
契約内容を慎重に決めることが重要です。
遺言や成年後見制度との整合性を確認
家族信託を導入すると、遺言や成年後見制度との関係も考慮する必要があります。
特に、遺言との役割分担を明確にしないと、後でトラブルの原因になることがあります。
専門家(司法書士・弁護士・税理士)に相談する
家族信託は法律や税制が関わるため、専門家に相談して設計するのがベストです。
信託契約書の作成や登記手続きもあるため、適切なアドバイスを受けることが重要です。
信託契約の作成と公正証書化(必要に応じて)
- 家族信託契約書を作成する(口約束ではなく、書面で明確にする)
- 公正証書にすることでトラブルを防ぐ(特に不動産がある場合)
信託口座の開設・財産の移管手続き
- 預金の信託用口座を開設する(通常の口座とは別にする)
- 不動産の場合は信託登記を行う
受託者が管理しやすい体制を整える
- 定期的な報告のルールを決める
- 税務処理の方法を確認する(贈与税や相続税の影響をチェック)
- 受託者の負担を軽減するためのサポート体制を考える
まとめ
家族信託をする前にやるべきことは、目的の明確化、財産の整理、関係者の決定、契約内容の設計、専門家との相談、手続きの準備です。
特に、専門家のアドバイスを受けながら進めることで、後々のトラブルを避けることができます。