訪問介護の現場で、よく見かける光景があります。
床に新聞やチラシが積まれている。
脱いだ服がそのままベッドに置かれている。
買ってきた物が袋のまま並んでいる。
ご家族からすると、
「どうして片付けないの?」
「危ないから何度も言ってるのに…」
そんな気持ちになることも多いと思います。
でも、認知症の方にとっては、“わざと散らかしている”わけではありません。
「あとでやろう」が途中で消えてしまうWさん
Wさんが訪問時、何かを探していました。
お聞きすると、ハガキだそう。どんなハガキだったかもうろ覚えでした。
一緒に探そうと、机の上や書類が置いてあるところなど探している途中、
「あ、これ、しとかないかん。」と違うことを始めてしまいます。
手に持っているものを、ポンとおいて違うことをするので、その置いたものが、また迷子に
なってしまうようです。
Wさん、気が付くと庭を掃いて水やりを始めようとしていました。
認知症の方は、短期記憶が低下していることがあります。
たとえば、
- 洗濯物を持って移動した途中で別のことが気になる
- ゴミをまとめようとして電話が鳴る
- 買い物袋を置いたあと、何をしようとしていたか忘れる
すると、“一時的に置いた物”が、そのまま残ってしまいます。
「見える場所」に置いて安心しているDさん
Dさんのお宅は収納家具がしっかりあるお宅です。
でもその収納家具の扉の前にかごを置いて物が入っており、肝心の奥の収納スペースは空っぽ。
その収納スペースに入れてしまえばいいと思いますが、中に入れてしまうと後で何を入れたか
分からなくなるそうです。
どの部屋に行っても、収納スペースの前にかごが置いてあり、物が入っている状態です。
認知症の方の中には、
「しまう=無くなる」
という感覚になる方もいます。
引き出しや収納にしまうと、どこに入れたか分からなくなり、不安になるのです。
だから、
- 大事な書類
- 財布
- 薬
- 着替え
- 食べ物
などを、目につく床やテーブルの上に置いて安心していることがあります。
周囲から見ると散らかって見えても、本人にとっては“分かりやすい配置”だったりします。
実は「危険」と隣り合わせ
ただ、床に物が増えると転倒リスクは一気に上がります。
特に高齢者は、
- 小さな段差
- ビニール袋
- コード
- 雑誌
などでもつまずきやすくなります。
訪問時に、
「これ危ないな…」
とヒヤッとすることは本当に多いです。
骨折から一気に歩けなくなってしまう方もいるため、“片付け”は見た目だけの問題ではないと感じます。
家族ができること
毎日散らかる部屋を見ると、ご家族も疲れてしまいます。
「何回言っても同じ」
「イライラしてしまう」
それは自然なことだと思います。
☆片付けのポイント
1.強引に捨てない。→怒ったり、強い不安を招きます。
2.「見える化」する→透明なケースに入れたり、机の上に並べる
3.本人の同意を得ながら、少しずつ進める→まずは賞味期限切れのものからひとつずつ
☆現場での工夫
- 一緒に確認しながら分ける
- 「これはここに置きましょう」と場所を固定する
- メモやラベルを貼る
- よく使う物は取り出しやすくする
でも、認知症による行動には理由があることを知るだけでも、少し見え方が変わることがあります。
介護サービスやヘルパーが入ることで、第三者だからこそスムーズに整理できる場面もあります。
“全部きれいにする”ではなく、
「安全に歩ける」
「必要な物が見つかる」
まずはそこを目標にしても十分だと、私は感じています。
まとめ
認知症の方が床に物を置いてしまうのは、
- 忘れてしまう
- 収納すると分からなくなる
- 不安を減らしたい
そんな理由が重なっていることがあります。
片付けは、“性格の問題”ではなく、“認知機能の変化”が影響していることも多いです。
だからこそ、責めるよりも、
「どうしたら本人が安心して暮らせるか」
を一緒に考えていくことが大切なのだと思います。
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