Aさんは几帳面な性格で、若い頃は会社で経理の仕事をしていました。
お札を数えるのが上手です。札の持ち方から教えてくれます。
10年ほど前は一人でお買い物に行ってたらしいです。
お気に入りのポーチをもって、お洒落にも気を使っておちゃめな人だったと聞きました。
数年前には、同じものばかり買ってくるようになり、返品することも・・・
今は認知症が進んで、数えていたお札も口にするようになりました。
認知症によっておこる異食
「異食」とは、認知症の行動・心理症状のひとつです。食べ物でないものを口に入れたり、飲み込んでしまう行為のことで、特に中期以降にみられます。
目につくものは何でも口に入れる可能性があります。介護者も特に注意が必要です。
お菓子や薬のパッケージ、ティッシュペーパーや衣服のタグ、ボタンなど・・・
ビニール袋を飲み込んで窒息したり、洗剤を飲み込んで中毒を起こしたりと命の危険もあります。
異食の理由は? A子さんに対する対応
異食に対する対応として、次のことをやってみました。
- いつもいる机の上を整理する。
まずは目の前にティッシュペーパーの箱やレクの工作の材料など、小さいものは置かないように気をつけます。
A子さんは隣で作業をしている利用者さんの使っていた工作の材料等を、持っていたりしたので隣の人との間をあけ、お金を数えたりするときは、職員が横について一緒に作業します。
- 空腹感を抑える
認知症になり、脳の機能が低下すると、満腹を感じる機能も衰え、空腹を感じやすくなります。適度に間食を追加して摂っていただくようにします。
A子さんはよく「ティッシュ取って」と食べた後口をふかれますが、1枚渡して使った後にすぐ回収します。
- 食べること以外の楽しみを増やす
ストレスにより、異食を引き起こすこともあります。じっとしているとつい何かを食べたくなってしまいますが、歌を歌ってみたり、得意なことをじっくり集中して取り組んだりすることで、異食が収まることもあるそうです。
A子さんは、コーラスをしていたとのことで、歌が上手で、よく昔の歌を覚えていらっしゃいます。一緒に歌ったり、教えてもらったりすると、嬉しそうにされています。
食べることは人生の楽しみ
食べることは、生きること。高齢者にとっても食べることは人生の楽しみでしょう。
A子さんも食べる時には、美味しそうに、時々手が止まってしまうこともありますが、声をかけるとまた食べ始めます。時々手伝うこともありますが、「ありがとう」と言ってくれます。
話していても聞き取れないこともありましたが、性格のかわいいA子さん。
退職する前に挨拶に行ったとき、「お元気でね」といった時、「また明日も来てくれる?」といってにっこり笑った顔が忘れられません。