徘徊により、行方不明になる高齢者は年々増加し、全国で1万8千人にも達しています。
認知症による徘徊は止めることが難しく、事件や交通事故に巻き込まれるリスクがあります。
思いついたら止められないKさん
Kさんはお上品な利用者さんで、お花やお茶をしていたせいか、所作がきれいです。
お茶を飲むときにも、両手で飲みますし、ご飯を食べる前にも手を合わせ、薬を飲むときにも少しずつ飲んでくれます。
漢方薬を飲むときまで、少しずつ手に出して飲もうとするので、そこは直接口に運んでいただいてます(笑)
いつもはのんびり過ごすKさんですが、急に思いついて立ち上がり、何処かへ行こうとします。どこに行こうとするのかお聞きすると、「郵便局に行かんと」「振込しないと」と言われます。元金融機関にお勤めしていたらしく、お金の扱いが上手です。
そんな時は、「もう夕方ですから、お店しまってしまいました。明日にしましょうか?」とか、「今はまだ暑いので、熱中症になったら大変!もう少し涼しくなってからにしましょうか?」などと伝えると、一旦納得してはくれるのですが、しばらくしてまた思いついて立ち上がります。
そうなると、職員は止められず、散歩に行くことになります。しばらく歩くと、気が済むのか、疲れるのか、「そろそろ、帰りましょうか?」というと、納得して帰ることになります。
徘徊するのは理由がある。
Kさんの口癖が「ごめんなさいね、迷惑ばかりかけて・・・」でした。トイレ介助に行くときも、お風呂に入るときも「私、おかしくなって何もできなくなったの。」とおっしゃってました。
自分でしなくちゃと思う反面、それができないのをストレスに感じていたようです。それが不安につながって、居ても立っても居られなくなり、歩いてしまうことがあります。
また、昔の習慣を思い出すことにより、徘徊をしてしまうこともあります。子供のお迎えの時間とか夕飯の準備のための買い物とか・・・
本人にとって、目的のために歩いてるのです。その途中で、思考力や判断力が失われ、徘徊につながってしまうのです。
徘徊の対処法は?
一番ダメなことは、無理に止めることです。理由があって行こうとするのにそれを止めるのは逆効果です。
Kさんの場合も、説得してなんとか座ってもらった場合、ストレスが溜まって物にあたったり、暴言が出たりしたこともあります。
まずは、話を聞くこと。 怒らないこと。
実際にはなかなか難しいですが・・・ 話を聞いてもらったことで納得する場合がほとんどです。
次に、一つの作業に集中させることです。
Kさんは金融関係の仕事をしていたので、100均のお札を仕分けしたり、ノートを渡して書いてもらったりしていました。時にはお茶を立ててもらってお茶会をしたり。
何かお手伝いを頼めば、自分にも役目があり、「自分の居場所」を見つけて安心できるのではないでしょうか。